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グビジネスを俯瞰する。

シューズビジネスの世界の潮流を考える

商品が道具になった90年代

 バブルが崩壊して90年代の日本は“失われた10年”と云われた時代に、シューズの市場はナイキに代表されるスポーツシューズが未曾有のブレイクをしました。それは日本に限ったことでなく、世界中に起きたことです。
 これから数十年たって、この90年代から21世紀の現在までの歳月をふり返ってみたときに、人類の履物が世界規模で大きく変わった節目の時代だったことが、あらためて見えてくるはずです。
 それは人間がリラックスした快適な生活を求めてカジュアル化をおしすすめたからですが、市場経済がつくり出した豊かな社会が新しい消費のかたちをつくり出したからでもあります。豊かな社会によるモノ余りは人々が自分の価値観や感性によってモノを選択し、モノを自分なりの生活をつくる部品とし道具化しました。
 快適でリラックスした生活をつくるジーンズやTシャツと同じように、スニーカーは誰もが自分なりに着こなし履きこなす道具になったのです。選択消費はモノ余り社会がつくった消費のしくみのカジュアル化ということができます。カジュアル化は既存の習慣や秩序からの解放と云うことです。
 ジーンズもスニーカーも年令、性別、季節に無関係です。
 70年代からスポーツシューズが街で履かれ、ジーンズが世界中の若者立ちの間に拡がりました。しかしこうしたカジュアル化が社会のすみずみまで浸透し拡がったのは、70年代の若者が60才になった21世紀にかけてのことです。

シューズビジネスに世界戦略の時代

 年令も性別も季節も関係がないということは、普遍的でベーシックで継続性があるということです。
 コンバースはいろいろなバリエーションがあり、毎年新しい変化が見られます。しかし基本になっているモデルは変りません。
 もちろんパンプスは女性の履物として永遠の魅力をそなえていますし、クラシックな男のドレスシューズも捨て難いものです。
 しかしカジュアル化の流れは90年代からのこの10数年の間に世界を圧倒するものすごいものだったと思わずにいられません。
 それはIT革命を伴ったグローバル化が背景にあったからです。
 年令も性別も季節も超えた普遍性ということは世界共通ということであり、ビジネスとしては世界戦略の時代ということです。72才の私の妻はカンペールを履いていますが、35才の息子の嫁も似たデザインのカンペールを履いています。そしてカンペールは世界の40数カ国に販売しています。
 昨年からの“クロックス”のブームを考えると、新しい素材やモールドの開発という大きな投資を可能にする世界戦略は、ベーシックで普遍性をそなえた商品と機能性(道具性)そしてシステマティックな店頭展開によって成り立っているのです。
 スポーツシューズのタウンシューズ化=スニーカー化で始まった履物の革命は、ベーシックなカジュアル化というコンセプトでさらに新しい世界戦略がくりひろげられるに違いありません。
 トヨタやソニーあるいはユニクロだけに名をなさしめず、シューズでも一矢報いることはできないものでしょうか。