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NOTES ジャルフィックのスタッフが日常での発見を綴ります!
2011 Sep
池田正晴

極まるへなちょこ。(1)


東京でつくるということ:東京という立ち位置

 我々を含めて、靴やバッグが好きでこの仕事を選んだという人間は、多かれ少なかれヨーロッパの商品に対するコンプレックスがある。「フランス靴は粋だね!イタリアのつくりにはやっぱりかなわないね!」という常套句がそれである。素材は絶対にいいし、つぼを心得たつくりは、決め過ぎずにゆるく洒落ている。更に言えば、70年代にファッションに目覚めた世代にとって、舶来至上主義は通過儀礼にも等しく、初々しい少年少女のDNAにしっかりと組み込まれてしまった。それ以降の生業はヨーロッパ調を決め込んだ亜流に甘んじざるを得なかった40年である。
 しかし今や、日本のファッションマーケットは世界に周知のものとなり、世界の産地から流入する選択肢も豊かである。インポート商品の日常化の中で消費者の選択眼はより鋭敏になり、ブランド(デザイン、素材、仕立て、雰囲気など)の差違を巧妙に使い分け購入するようになっている。
 そのように世界からさまざまなテイストやクオリティが集積される商環境にあって、東京のブランドのあるべき姿=存在理由が改めて問い直されている。もちろんそれは“生き残るために”である。東京で考え、果たして浅草でつくられる商品が、独自性という点でそれらと比肩するための条件とは何か。ライセンスではないブランドの構築は可能なのか。
 改めてライバルを考えてみると、ヨーロッパ勢の得意技は〈直球トレンド〉である。なぜならグローバルマーケットを想定し計算され尽くされたMDとパワー全開のブランディングを背負って投入されるからである。そんな直球と戦うには、いかに巧妙にヨーロッパ調を気取ったところで、亜流ではまず敵わない。
 では、東京ブランドのオリジンの拠り所を何にすべきか。となれば直球の盲点やニッチを探るというようなことになるのだが・・・。そのことに対する「サロン」の酒井伸子さんの素敵な回答が「へなちょこ感」である。東京オリジンとして堂々と生きるコンセプトの重要な糸口がここにある。これこそが“東京オリジンのおへそ”なんだ!と、すんなりと腑に落ちる名言だ。