時代におけるポジティブな要素の反映。
消費に意義をもたらすクリエーションに向けて

世界同時不況から脱却し景気回復へと向かう国が出てくる中で、世界的にはファッションにおいてもポジティブなムードが生まれ始めている。しかし日本には依然として社会的な不安感が蔓延しており、大きく発散する消費に対して自制心が働いているのは否めない。ファッションだけではなく、生活の中におけるさまざまなカテゴリーの中で小さな発散を繰り返す。自分にとっての満足感を推し量るという合理的な思考性が消費に強く現れている。そのような状況において、人はファッションに何を求めるのだろうか。

まず方向性として挙げられるのは、
・ 身につけることで安心感を得られるもの
・ 時間や空間を飛び越えられる、気分をスイッチさせるもの
・ より良い明日、未来をつくり出すポジティブなエネルギーを感じさせるもの
といったところだろう。ファッションがベーシックやトラッドに回帰している点、そしてストリートを賑わせている“山のイメージを反映したカジュアルファッション(山ガールや山男子)“。いずれも今の時代感と符合したものであることは言うまでもない。

今シーズンのジャルフィックトレンドは、この流れに今の時代のポジティブな事象をストレートに当て嵌めてテーマを構成してみた。例えばそれは、
・エコ、エシカル意識の定着化。ライフスタイルへの浸透
・イギリスのロイヤルウエディングというハッピーなトピックス
  • 国内外における日本に対する関心の高まり
  • といった要素だ。

    サスティナビリティという概念が生活の中に浸透する中で、規範のあるベーシックやトラッドを新しいアイデアで新鮮に見せるものは、ポジティブなムードをもたらすとともに安心感にも繋がる。また、イギリス王室に増える新たな家族は、今の時代にふさわしい新しい女性像の一翼を担うだろう。そして現在のジャパンブーム。経済産業省製造産業局には昨年「クール・ジャパン室」が設置された。日本の戦略産業分野である文化産業(=クリエイティブ産業:デザイン、アニメ、ファッション、映画など)の国内外への発信を推進するという。このような情勢を一因に、日本ならではのセンスやものづくりの強みについて再認識するというプロセスが生まれることになる。
    消費することが同じ地域や国で生活している人のためになる。消費に対して罪悪感ではなく意義を感じることで、消費を抑制する気持ちは薄れて行くだろう。今の日本の状況を鑑みながら、3つのトレンドテーマを設定している。