原皮高騰の中で明確化するトレンド。
未来に向けたクリーンな表面感へのトライアル
4月6日から8日までの3日間、ボローニャにてマテリアルのプレセレクション、リネアペッレが開催された。世界から多くのビジターで賑わい、ポジティブな要素の多い展示会となった。皮革を中心とした素材展としては世界最大であり、“ネクスト”を探すデザイナーにとっては欠かすことのできない重要な役割を果たしている。
ここ1年、製品メーカーのみでなくタンナーの頭をも悩ませているのが、本底材を含めたレザーマテリアルの値上がりである。レディスコレクションとそれより2〜3ヶ月早いメンズコレクションでは、同シーズンでありながらレザーの価格が変化しており、さらにサンプル製作時と実際の生産時にも価格に差が出るという現象が現在生じている。“金(GOLD)のように日に日に値上がる原皮”という言葉を耳にすることもしばしばだ。
原皮不足の理由は下記のようにいくつか考えられる。
今シーズンのリネアペッレでは、この原皮の値上がりを背景に、クロスタを使用した実験的なテクニックによるクリエーションが多く見られる。またタンナーによっては、抑えた価格の商品をセカンドラインとして設けるなどの工夫が行なわれる。一方で、クオリティーの高いレザーを使用することが、直接商品価格に反映されることはやむをえないだろう。
トレンドとしては、スムースやパンチングのテーマは一年前の春夏や先秋冬の提案の延長にあるが、それらのクリエーションがより拡大され、新たなシーズンに向けてバリエーションも豊富に揃えられている。また、今シーズンは各社が明解なテーマ設定を行なっており、春夏シーズンに向けたナチュラルで爽やかなカラーリングが目立つと共に、長く継続された“風化のサーフェイス”から “クリーンなサーフェイス”へと確実に移行した。そしてクリーンな表面感においても技術的な工程は積み重ねられている。それはまるでポジティブな未来に期待するかのようである。
今シーズン発揮されたさまざまなエンボス技術からは、数年前に同展示会で聞いたタンナー社長の“低迷時は技術を蓄積する時だ”との言葉が思い出された。