新しい時代の“快適性”を問い直す
2010年を21世紀の新しい価値観づくりのスタートとするというコンセプトに並行するように、リーマンショック以降の世界不況が始まった。その反動として現れた2010年春夏のオプティミズム(楽観主義)なムード。続く秋冬にそれは、歴史の中で受け継がれてきたクラシックの美しさ、あるいは人にとって普遍的なノスタルジックなものへの回帰という、より内省的なムードに引き継がれることになりそうだ。
そして、その延長にある2011年春夏。個人と周囲に対する今の時代にふさわしい“快適さ”を問い直していくというこの流れは、リアルさと真摯な姿勢を持っており、ファッションを考える本流としてもより深まりを見せそうだ。使う側にとっての身体や心の快適性、さらには作り手にとっての快適性、そして環境に対する快適性。視点はこれまで以上に広がっており、さまざまな関係性に配慮する中で、デザインには物語性や論理性がより強く求められることになる。
ジャルフィックトレンドはこの「STORY(物語性)」に着目し、2011年春夏のテーマを設定している。デザイン展開のひとつの指標となるべく、“物語性を発揮しやすい”ということに視点を置いた明確なテーマづくりを目指した。まず、“物語を描くモノの条件”として下記の3つを仮定している。
1.情緒性を表現する明確な個性を持つ
2.歴史や技術に裏づけられたロマンがある
3.シーンや背景に対する想像の膨らみを促す
1.においてはロマンティックやエスニックなど誰もがイメージしやすいムード感が、2.ではクラフトワークやユニフォームなど、技術力やモチーフの背景が視覚化されているものが、そして3.からはアウトドアやスポーツ、スクールといった、ライフスタイルの特定のシーンに不可欠な道具などが抽出される。それらを次稿の「SKY JAMBOREE」、「ORCHID LIP」、「ROMANTIC UTOPIA」という3つのテーマへと展開している。